ようこそ!このプログは,地方都市在中の私ことフルカワヒロミという腐れ外道が,これまで音楽活動等をする際に使っていた自己オフィスが有名無実化していることを嘆き,個人的な情報発信(というか,音楽を中心に好きなモノを好き勝手に語る)の場として,皆様のお目汚しを気にせず,書き殴っているものです。これを読んで同調してもらえたり,興味を示してもらえれば光栄ですが,なにせ不親切きまわりない内容ですので,更に深く調べたい方はリンク先やGoogle等の検索サイトでお願いしますm(_ _)m

CANTE DIASPORA/SOUL FLOWER UNION


 9月も後半になって,そろそろ涼しくなるかなぁなんて思っていたら,今朝はいきなり寒くて目が覚めてしまいましたとさ。しかし,寒いときに感じる寝袋のありがたみで,眠たいので開けっ放しの窓を閉めずにきちんと寝袋に潜り込めば何とか寒さをしのいで,朝までゆっくり眠れましたです。これなら冬も何とか越せるかなぁという感じですかね。これまでも冬はどちらかといえば足が冷えて目が覚める事が多かったので,そういう意味では足が完全防備の寝袋は私にとって最強の睡眠グッズになってくれそうです。でも,やっぱり布団が恋しくなったりもするのですが・・・まぁ,仕方ないか。

 今回はSOUL FLOWER UNIONの新譜と梶山シュウさんの新譜とどちらにしようか迷ったのですが,梶山シュウさんの新譜はまだあまり聴き込んでいないので,今回はSOUL FLOWER UNIONの新譜CANTE DIASPORAを取り上げたいと思います。前作,LOROSAE MON AMOUR発表後,ラヴィエベル,寝顔を見せて,海へゆくとマキシシングルを発表してきたSOUL FLOWER UNIONが満を持して発表した今回のアルバムですが,個人的にはSCREWBALL COMEDYに感触が近いかなぁと思っています。中川敬曰く,SOUL FLOWER史上最高のアルバム(まぁ,これはいつも言っていますけど)で,SOUL FLOWERの1つのターニングポイントになるアルバムということですが,確かに今回のアルバムがターニングポイントになるんだろうと思っています。というのも,これまでのSOUL FLOWERはちんどん,民謡,アイリッシュトラッドのフレーバーをこれでもかっていうくらいにちりばめていたのですが,今回のアルバムはそういったものを踏まえつつ,自然にバンドの音にしているという印象を受けました。また,前作のLOROSAE MON AMOURから「唄」という部分をかなり意識しているように感じたのですが,今回のアルバムでは「唄」を中心に添えて,そのためのアレンジを施していると感じました。そういう意味では唄もの至上主義の私としては,非常に大好きなアルバムです。
 まず1曲目の“月光ファンファーレ”ですが,ピアノと三線で始まったと思ったら,オペラっぽく,「天国は満席,地獄はゼネスト,神も悪魔もそっぽ向く」と「せいくらべ」のようなメロディーで始まったと思ったら,伊藤コーキの2ビートの弾んだリズムが思いっきり踊らせてくれる曲になっています。Black Bottom Brass Bandのブラスの音も浮き上がらずにいい音でミックスされています。しかし,イントロの「天国は満席,地獄はゼネスト」とかサビのエンディングの「唄でつむいだ幸福論」とか良いフレーズだなぁと思っていると,間奏でブラスが「東にのぼったお日様が」と赤塚不二夫リスペクトなフレーズが入っていたりして笑わせてもらいました。こういう遊び心がうれしいですよね。
 2曲目の“愛の総動員”なんですけど,ラテンなリズムが気持ちいいナンバーです。この曲もブラスがイントロでいい音させてるよなぁと思っていたら,奥野真哉のピアノが隠し味的に良い感じで鳴っていたり。歌詞もこれでもかっていうくらい前向きな歌詞で,というか,SOUL FLOWERの曲で「HE HEY HEY!」とか 「OH!YEAH!」なんて言葉が聴けるなんて思っていませんでしたですよ。
 3曲目は,私的には名曲と思っています“海へゆく”でございます。短いイントロの雰囲気からして好き。で,中川敬のちょっとウェットな歌い方もいいですねぇ。こういう歌い方もできるようになったんだなぁ。しかし,サビの「明日のために本日も祝杯を。あまたの悲しみを天空へ放つ。過ぎ去りし唄,来るべき唄どもよ。男は決意込め,また海へゆく。」だなんて本当,メロディーと歌詞が本当にズシズシと心の中に染み込んできますです。それからこの曲では,上村美保子のハイトーンのコーラスが気持ちよく決まっていて,そこも聴き所かなぁ。あぁ,河村博司のスライドギターも泣かせますです。
 4曲目の“ラヴィエベル〜人生は素晴らしい!”は,これもライヴでは盛り上がりまくること必至の軽快なナンバーです。Black Bottom Brass Bandのブラスが気持ちよく入っています。しかし,いつ聴いても「ラヴィエベル人生は,ラヴィエベル素晴らしい。ラヴィエベル人生は,ラヴィエベルくそったれ!」と軽快に歌いきる中川敬は本当にカッコイイです。それと,奥野真哉アコーディオンもカッコよしです。
 5曲目の“道草節”は,ツアーを回るバンドマンの悲哀を面白おかしく描いたナンバーなんですけど,イントロの金子飛鳥フィドルがいいよねぇと思っていると,中川敬のちょっとしゃがれた声で唄が始まり,「歌っているのか飲んでいるのか,崖っぷちの宴」とか,「べっぴんさんの笑顔があって我らは生きる,そうさ風を切って道草は続く」なんて唄ってくれるんですけど,生きることそのものが道草なので,バンドマンだけでなくサラリーマンの私にも当てはまる唄だと思っているんですけどね。間奏の河村博司のスライドギターが非常に曲の感じと合っていて,気持ちよいです。
 6曲目の“閃光花火”はタイトルだけ見ると線香花火の間違いなのかいな?と思ったり,アレンジもレゲエで,ちょっとほのぼのした感じなんですけど,歌詞をよく聴くと,爆撃の様子を閃光花火に見立てていて,結構ブラックだったりします。「大空襲の花,爆音上げる花,閃光が轟いて久しぶりに驚く」なんて歌詞をサラッと軽く歌ってしまう中川敬を尊敬してしまうというか,このあっけらかんさが今のSOUL FLOWERなんだろうなと思ってみたりもします。
 7曲目の“スイミング・プール”はサイケデリックなイントロと沈み込むようなジゲンのベースラインが印象的な曲です。タイトルからすると明るいアップテンポの曲を想像していたのですが,その逆の展開でやられたなぁと思ってしまいました。歌詞の中に全く「スイミング・プール」っていう言葉が出てこないのですが,散文的な言葉が並べられる中に「水たまり」っていう言葉があったので,それがそうなのかなぁなんて思ったりして。
 8曲目の“パレスチナ”はタイトルどおり中近東っぽいイントロで始まるナンバーで,なんかやたらとドラマチックなんですけど,おっこのまま中近東っぽい唄で新たな展開かっ?と思っていたのですが,中川敬の唄が始まるとやっぱり中川敬風味なんですよね。やっぱり中川敬の声って強烈なんだなぁって改めて思ってしまいました。歌詞はタイトルどおりちょっと宗教っぽい感じかなぁ,多分紛争がテーマなんでしょうけど,私的にはちょっと苦手かもね,こういう歌詞は。
 9曲目の“国境線上のカルナバル〜ヒャクショウ・ソウル”は奥野真哉の軽やかなアコピとBlack Bottom Brass Bandのブラスがメチャカッコいいナンバーです。歌詞は前半部分は今の政治を揶揄しているんだろうと思います。しかし,中川敬の口から「男の純情」なんて歌詞が出るとは思いませんでしたけど,まぁお互い歳を取ったということでよろしいんではないでしょうか。曲の中盤でヒャクショウ・ソウルに切り替わるんですけど(って,そもそもこのタイトルが凄いよね。),「同化も風化も拒絶せよ」は昔から中川敬が言っていた言葉なんですけど,「全ての楽器を武器にせよ」は沖縄の人の言葉だったと思うんですけど,まぁいいか。
 10曲目の“非公式な夜”はタイトルからするとイカつい感じの曲なのかと思っていたら,上村美保子の軽やかなコーラスが気持ちいい,ジャズっぽいナンバーでしたです。こういう曲だとジゲンのベースが良い感じでなっているよなぁと思いましたです。なぜに「非公式」な夜なのかは聴いた人が想像してもらえればと思います。
 11曲目の“名もなき惑星”はアイリッシュトラッド風味のイントロから,奥野真哉のアコピだけでそのまま中川敬が浪々と歌い出す曲で,こういう曲もいいよねなんて思ってしまうシンプルなナンバーです。間奏の金子飛鳥フィドル中川敬三線の絡みもいいですし,この曲でも上村美保子のコーラスが良い感じで入っていますです。桃梨をまんまSOUL FLOWERに組み込んだのは成功だったですよねと私的には思ってしまいました。
 12曲目の“辺野古節”は,マキシシングルやライヴDVDとのセットといろいろとバージョンがありましたが,個人的にはこのアルバムのバージョンが一番好きですね。バンドの音と三線の音と中川敬のヴォイスが本当に良い感じというか,本来ならモノノケ・サミットっぽい曲なんですけど,ユニオンでやっても全然違和感ないです。というか,サビの「テンツクテンテントゥルルンテン・・・」のところの言葉とメロディーの乗っかり方は本当に素晴らしいと思いましたです。
 13曲目の“朝ぼらけ”は,マキシシングルでのお遊びセッションから中川敬のヴォーカルを除去したバージョン(マキシシングルのタイトルは“「不惑の朝ぼらけ”)ですが,ゲストのリクオのピアノ,河村博司のスライドギター,奥野真哉のエレピの絶妙なアレンジがはっきり言って私のツボにはまりまくっていますです。
 14曲目の“もっとおっぱい”はタイトルはこんなですが,もの凄くカッコイイ,オールドタイプのR&Bになっています。というか,「みんなおっぱいを吸って大きくなったんだ」っていう真面目なテーマをこんなに茶化してくれて「千代に八千代に永久におっぱいが世界を導いている」だなんて,とても私のような凡人には書けない歌詞でございます。しかも,エンディングは“おつかいありさん”を遊びで入れているしな。で,ふと思ったのですが,その昔,“青天井のクラウン”という少し寂しい曲がNHKみんなのうたで取り上げられたのですが,むしろこの曲をみんなのうたで取り上げてもらった方が非常にNHK的だと思うのですが,いかがなもんでしょうかね?
 ラストナンバーは,これも個人的には名曲だなぁ“寝顔を見せて”です。イントロのアコギのカッティングとアコーディオンの絡みだけでやられてしまいましたです。多分,この曲は子供がいる人が聴いたら,本当に好きになるんだろうなぁと思います。サビの「きれいなまだらの羽を閉じて,天使の笑顔の君が眠る」っていう歌詞や「この世界を全部あげよう。さぁねんねしな,夜はふけた。半開きの寝顔を見せてよ」なんていう歌詞は本当,子供と一緒に生活した事がある人ならば,思い出してちょっと切なくなってしまいますよねぇ。

 で,実はこのレコ発ツアーを見に行ったんですけど,これが良かったんですよ。3時間弱,しっかり唄って踊らせてもらいました。残念だったのは仕事帰りに行ったので,前の方で思いっきり踊れなかったことかなぁ。で,更に残念だったというか,なんとかしたらと思ったのは,SOUL FLOWERのライヴは今は子供については無料なんですけど,ハッキリ言って小学生以下の子供を連れてきている親が結構多くて(中には乳児もいた。),午後10時までのライヴで,しかも結構轟音なので,児童虐待でないの?って思ってしまったことと,アンコールをみんなで求めているとき,子供をステージ上に上げて,楽屋の方まで2回も走らせていた馬鹿親がいたんですよね。ステージ上に子供を上げて,楽器をひっくり返したりしたら,ライヴどころじゃないだろと私は思うのですが,そういうことを考えず,中川敬も子供が生まれたので,うちの子も可愛がるだろうと思う馬鹿親はもう少し考えろよなと思いましたです。しかし,ライヴは常に笑顔で歌い踊る上村美保子が個人的には良かったですねぇ(が,“ひぐらし”を歌ったのは,いまいちだったかなぁ。やっぱりうつみようこの唄はうつみようこのイメージが強すぎるので,どうせ歌うならアイドル声の伊丹英子がボーカルを取った曲(イデオロギークッキングとか・・・しかし,これはMescaline Driveの曲か。)の方が良かったのではないかと思います。)。あとジゲンの秋田音頭も格好良かったです(もちろん,その他の方々も素晴らしかったのですが,私的にはこの2人は初めてだったので。)。
 ライヴはもの凄く楽しかったのですが,子供が小さいうちは多少は我慢しなきゃっていうのは,もう考え方が古いのかなぁとか,いろいろと考えさせられることのあったライヴでしたね。まぁ,バンドもファンもお互い歳を取るから,こういう問題も出てくるのは当たり前なんでしょうけどね。